屋根の劣化は、雨漏りの発生や断熱性の低下などを引き起こします。快適な住まいをキープするためには、定期的に屋根のメンテナンスを行うことが重要です。
そこでこの記事では、屋根のリフォームについて詳しく解説します。屋根リフォームの費用相場や工事期間、利用できる補助金制度についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
【工事の種類別】屋根リフォームの費用相場
屋根のリフォームでは、主に次の3つの工事が選択肢にあがります。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
屋根塗装 | 30~70万円 |
屋根の重ね葺き(カバー工法) | 80~150万円 |
屋根の葺き替え | 100~250万円 |
※費用は塗装面積約30坪前後、一般的な2階建て住宅の場合
屋根塗装・屋根の重ね葺き・屋根の葺き替えで工事の内容や費用が異なります。詳しく見ていきましょう。
屋根塗装
屋根塗装の費用相場は、30~70万円です。
屋根塗装とは、いわゆる屋根の「塗り替え」です。屋根塗装には見た目を整えるだけでなく、塗膜によって屋根材の劣化や雨漏りを防ぐという目的もあります。
ガルバリウム鋼板やスレートの屋根の場合、定期的な塗装が必要となりますが、屋根塗装ができるのは屋根材や下地に大きな劣化がない場合のみです。
屋根塗装の費用は、使用する塗料の種類によって異なります。
比較的耐用年数が短いアクリル系塗料やウレタン系塗料は塗装費用を抑えられますが、その分塗り替えの頻度は高くなります。それに対して耐久性の高いシリコン系塗料やフッ素系塗料は、長持ちしますが1回の塗装費用は高額になります。
塗料の種類 | 耐用年数 | 塗装費用の目安 |
---|---|---|
アクリル系塗料 | 5~8年前後 | 1400~1600円/㎡ |
ウレタン系塗料 | 7~10年前後 | 1700~2200円/㎡ |
シリコン系塗料 | 8~12年前後 | 2300~3000円/㎡ |
フッ素系塗料 | 13~15年前後 | 3800~4800円/㎡ |
屋根の重ね葺き(カバー工法)
屋根の重ね葺き(カバー工法)の費用相場は、80~150万円です。
屋根の重ね葺きとは、既存の屋根材の上に新しい防水シートと屋根材を重ねる方法で「カバー工法」とも呼ばれています。
ガルバリウム鋼板やスレートの屋根であれば施工が可能ですが、屋根の下地の劣化が少ないことが条件となります。また、瓦屋根の場合は重ね葺き(カバー工法)はできません。
既存の屋根材の解体・撤去といった作業がないため、葺き替えに比べて費用が抑えられることや工事の手間が少ないことがメリットとしてあげられます。
屋根材を二重に重ねることになるため、ガルバリウム鋼板のような軽量の屋根材を使用するのが一般的です。ガルバリウム鋼板以外にもアスファルトシングルやジンカリウムといった軽量で機能性が高い屋根材を使用することもありますが、グレードの高い屋根材を使用すると費用が高くなる点に注意しましょう。
屋根の葺き替え
屋根の葺き替えの費用相場は、100~250万円です。
屋根の葺き替えとは、既存の屋根材を撤去し下地の補修を行った上で、新しい屋根材を設置する方法です。
下地から新しくなるので、屋根の機能性や耐久性が大きく向上します。また既存の屋根材や下地の劣化が進んでいる場合、重ね葺き(カバー工法)では補修できないため、葺き替えを行う必要があります。
重ね葺き(カバー工法)と比較すると、既存の屋根材の解体や撤去、下地の補修が入るため費用は高くなります。また既存の屋根がアスベストを含む古い素材である場合は、アスベスト処理費用も発生します。
なるべくリフォーム費用を抑えて屋根の葺き替えをしたい場合は、新しい屋根材に機能性とコストのバランスが良いガルバリウム鋼板やスレートを選ぶといいでしょう。
部分的な屋根リフォームの費用相場
屋根リフォームでは、塗装や葺き替えといった大規模な工事以外にも、部分的な補修を行うケースもあります。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
漆喰補修 | 30~50万円 |
コーキング補修 | 500~1,500円/m |
棟板金の交換 | 30万円前後 |
雨樋補修 | 10~50万円 |
それぞれの工事内容や工事が必要になるケースについて紹介します。
漆喰補修
漆喰補修の費用の目安は、30~50万円です。
漆喰補修は瓦屋根のメンテナンスとして必要な工事です。漆喰は瓦を接着するために使用されていますが、漆喰が劣化してくると瓦のずれが生じてしまいます。
瓦自体は耐久性が高く40~60年程度もちますが、雨漏りや瓦の落下を防ぐためには15年を目安に漆喰の補修工事を行いましょう。
コーキング補修
コーキング補修の費用の目安は、500~1,500円/mです。
コーキングとは目地を埋めるゴムのような素材のことで、屋根のひび割れなどの補修にも使用されます。また既存のコーキング材が劣化している場合も、コーキングの補修が必要です。
コーキングには「打ち替え」と「打ち増し」の2種類があります。
打ち替えとは、既存のコーキングを撤去して新しくコーキングを打つ工事です。劣化したコーキングを取り除くので、耐久性の改善が可能です。
打ち増しとは、既存のコーキングの上から新たなコーキングを重ねる方法です。既存のコーキングの劣化がそれほど深刻ではない場合に可能な工事で、撤去作業がないため費用や手間を削減できる点がメリットです。
コーキング補修の費用は施工方法と施工範囲に応じて決まりますが、大がかりな屋根リフォームに比べると費用は抑えられるでしょう。
棟板金の交換
棟板金交換の費用の目安は、30万円前後です。
棟板金とは、屋根の頂点に取り付ける板金の部材です。屋根の接合部分にあたるため、棟板金が劣化したり台風などで飛ばされてしまったりすると、雨漏りの原因になります。
棟板金が破損、劣化した場合は補修するのではなく、新しいものに交換するのが一般的です。棟板金を留めている釘の抜けなどは、コーキング補修で対応します。
雨樋補修
雨樋補修の費用の目安は、10~50万円です。
雨樋(あまどい)とは、屋根から流れ落ちた雨水を集めて、地上や下水に流す設備です。雨樋は屋根そのものではありませんが、屋根リフォームのひとつとして定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
部分的な補修や交換の場合、費用は10万円前後ですが、雨樋全体を交換する場合は50万円前後かかるケースもあります。
屋根リフォームを行うタイミングは?
屋根リフォームを行うタイミングは、屋根材の種類や劣化の状況によって異なります。「屋根塗装」と「重ね葺き・葺き替え」のそれぞれのケースで詳しく見ていきましょう。
屋根塗装のタイミング
屋根塗装のタイミングは、屋根材の種類によって異なりますが、築10~20年で塗装を行うのが良いでしょう。
屋根材の種類 | 塗装のタイミング | 耐用年数 |
---|---|---|
スレート | 7~15年 | 10〜35年 |
ガルバリウム鋼板 | 10~20年 | 20~40年 |
瓦(セメント瓦) | 10~20年 | 20~40年 |
瓦(和瓦) | 基本的には不要 | 40~60年 |
ジンカリウム | 基本的には不要 | 30〜50年 |
アスファルトシングル | 基本的には不要 | 10〜30年 |
また、再塗装のタイミングは使用している塗料によって異なります。
塗料の種類 | 耐用年数 |
---|---|
アクリル系塗料 | 5~8年前後 |
ウレタン系塗料 | 7~10年前後 |
シリコン系塗料 | 8~12年前後 |
フッ素系塗料 | 13~15年前後 |
屋根塗装のタイミングは、ご自宅の屋根材や使用している塗料によって適切な時期を選ぶ必要があります。まずは築10年をひとつの区切りとして、専門家に劣化状態をチェックしてもらい、メンテナンス計画を立てるのがおすすめです。
屋根の重ね葺き・葺き替えのタイミング
築20年を超えてきたら屋根の重ね葺きや葺き替えを検討しましょう。屋根材自体の耐久性が高くても、屋根の下の防水シートは20年前後で劣化が始まります。このタイミングであれば、下地に大きな劣化がない場合、費用を抑えられる重ね葺きが可能でしょう。
築30~40年ごろになると、屋根材や屋根の下地の劣化も進みます。雨漏りを防ぎ快適な住まいを保つためには、屋根の葺き替えを行うのがおすすめです。
屋根リフォームにかかる期間
屋根リフォームにかかる期間は、工事の内容や施工範囲によって異なります。
- 屋根塗装:7~10日前後
- 屋根の重ね葺き(カバー工法):10日前後
- 屋根の葺き替え:14日前後
屋根リフォームの期間中は、足場設置の際の騒音や塗料のニオイなど、近隣への影響も考えられます。屋根リフォームの工事が決まった場合は、近隣の住宅に工事期間を伝えるとともに、適切なご挨拶をするとトラブルを避けられるでしょう。
また屋根リフォームを行っている間は、洗濯物を外に干せないのが一般的です。工事期間中の洗濯物の対応なども事前に検討しておくと安心です。
屋根と外壁は同時にリフォームしたほうがいい?
屋根リフォームを行う際に、外壁塗装も同時に行うことで、費用の総額を抑えることが可能です。屋根リフォームと外壁塗装は、どちらも工事を行う際に足場を組みますが、同時に工事を行うことで足場を共通利用できるためです。
足場の設置は、一般的な2階建ての戸建て住宅で10~20万円ほどかかります。屋根と外壁のリフォームを別々に行うと、この足場代が二重にかかってしまうのです。
また屋根と外壁のリフォームを同時に行えば、依頼先を探したり見積もりを取ったりといった作業も1回で済み、手間を省けるのもメリットでしょう。
屋根リフォームで利用できる補助金制度
屋根のリフォームでは、比較的大きな費用が発生します。費用を抑えるためには、補助金制度の利用を検討するのがおすすめです。
屋根リフォームで利用できる補助金には、国が実施しているものと地方自治体が実施しているものがあります。この記事では、補助金の事例として、以下の3つの事業・制度をご紹介します。
- こどもみらい住宅支援事業(国の補助金事業)
- 鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業(自治体の補助金事業)
- 南さつま市住宅リフォーム補助金(自治体の補助金制度)
※補助金に関する記載は2022年11月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
こどもみらい住宅支援事業
こどもみらい住宅支援事業では、「子育て支援」と「2050年カーボンニュートラルの実現」の観点から、省エネ性能を有する住宅の取得や既存住宅の省エネ改修をサポートする補助金を実施しています。
屋根リフォームにおいては、下記の工事が対象となっています。
- 外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
こどもみらい住宅支援事業の事務局に登録された製品を使用し、外壁、屋根・天井または床の部位ごとに、一定の使用量以上の断熱材を利用した改修工事。
こどもみらい住宅支援事業は、新築住宅の場合「子育て世帯※1」と「若者世帯※1」が対象となりますが、リフォーム工事の場合、住宅の所有者であれば子の有無や年齢にかかわらず、補助金の対象となります。
※1:申請時点において、子(年齢は令和3年4月1日時点で18歳未満。すなわち平成15(2003)年4月2日以降出生の子)を有する世帯。
※2:申請時点において夫婦であり、令和3年4月1日時点でいずれかが39歳以下(すなわち昭和56(1981)年4月2日以降出生)の世帯。
鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業
鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業は、既存住宅の安全性の確保と、良質な住宅ストックの形成を図り、子育て・高齢者等世帯の住まいづくりをサポートする事業です。
住宅の耐震診断、耐震改修工事及びリフォームを支援しており、具体的には以下の工事が補助金の対象になります。
- 断熱改修工事
- 外壁、屋根塗装工事
- そのほか屋内のリフォーム工事 など
南さつま市住宅リフォーム補助金
南さつま市住宅リフォーム補助金は、快適な住環境の整備を実現するために、住宅の取得や耐震診断・耐震補強工事、リフォーム工事に対して補助金を交付する制度です。
具体的には、以下の工事が補助金の対象となっています。
- 住宅の機能または性能を維持または向上させるための住宅の修繕、改修、増築
- 生活排水を処理するための集落排水・公共下水道への接続または合併浄化槽への切り替え
所定の条件を満たした場合、屋根のリフォームは「住宅の機能・性能の維持・向上のための修繕・改修」となるため、補助金の対象となります。
屋根リフォームで火災保険が適用されるケース
台風などの自然災害によって屋根が被害を受けた場合、火災保険を適用した修理が可能なケースもあります。
屋根リフォームで火災保険が適用されるケース
- 風災・雪災・雹(ひょう)災によって被害を受けた場合
- 被災から3年以内に申請を行った場合
- 修理にかかる費用が火災保険の免責金額を超える場合
ただし、被害の直接的な原因が「経年劣化」や「施工不良」による場合は、火災保険は適用されません。例えば、台風によって雨漏りが発生した場合でも、屋根の経年劣化が原因で雨漏りが生じていたケースでは、火災保険は適用されないのです。
日ごろから適切なメンテナンスを行い、経年劣化による不具合には早めに対処しておくことが大切です。
屋根のリフォームで失敗しないために信頼できるリフォーム会社に相談しよう
屋根のリフォームには、主に「屋根塗装」「屋根の重ね葺き(カバー工法)」「屋根の葺き替え」の3種類があります。屋根の劣化状況やリフォームの目的に合わせて、適切な工事を選ぶことが重要です。
屋根のリフォーム費用は、工事の内容によっては100万円を超えるケースも少なくありません。費用を抑えながら適切なリフォームを行うためにも、まずは実績豊富なリフォーム会社に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。