洗濯物を干したりガーデニングを楽しめたりするベランダですが「築年数が経過してきて劣化が気になる」「狭くて使い勝手が悪い」などお悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ベランダのリフォームについて費用相場や施工内容を詳しく解説します。ベランダをサンルームにリフォームする方法や、ベランダをなくす・広げる方法なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
ベランダリフォームの工事内容と費用相場
ベランダのリフォーム工事は、目的に応じてさまざまなものがありますが、工事の種類によって費用が変わります。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
防水工事 | 7万円~30万円 |
床材交換 | 5万円前後 |
屋根の設置 | 10万円~20万円 |
ベランダを広げる(拡張工事) | 30万円~60万円 |
ベランダをなくす(撤去工事) | 10万円~50万円 |
サンルームの設置 | 40万円~80万円 |
ベランダの全交換 | 30万~60万円 |
ここからは、防水工事・床材交換・屋根の設置など、それぞれのリフォームについて工事内容を詳しく解説します。
ベランダの防水工事
ベランダは屋外にあるため、日ごろから雨や紫外線の影響を受けやすい場所です。そのため定期的なメンテナンスとして、5~10年毎を目安に防水工事を行うことが大切です。
ベランダの防水工事は、主に次の4つに分けられます。
表面のメンテナンス
- トップコートの塗り替え
防水層の修繕
- シート防水
- ウレタン防水
- FRP防水
トップコートの塗り替え
ベランダの床の表面には、トップコートと呼ばれる防水材が塗布されています。トップコートは雨や紫外線によって徐々に劣化していきます。そのためトップコートの下にある防水層が劣化する前に、5年前後を目安に塗り替えを行いましょう。
シート防水
シート防水とは、ベランダの下地の上に塩化ビニル製やゴム製の防水シートを張る方法です。塩化ビニル製の防水シートは紫外線に強く、ゴム製の防水シートは温度変化に強いという特徴があります。さまざまなデザインの防水シートの中から、お好みのものを選べるのもメリットです。
ただし、シート防水は、平らなベランダにしか施工できません。凹凸があったり、複雑な形状をしていたりするベランダには施工できない点に注意しましょう。
ウレタン防水
ウレタン防水とは、ベランダの下地の上に液状のウレタンを塗布し、化学反応により硬化させる施工方法です。液状なので、複雑な形状のベランダにも施工が可能で、継ぎ目のない美しい仕上がりが魅力です。
ただし、液状のウレタンを均一に塗布するためには、熟練した技術が必要になります。また紫外線に弱いため、経年でひび割れが生じる場合があります。
FRP防水
FRPは「繊維強化プラスチック」という素材で、軽量で強度が高いことが特徴です。また摩耗性も優れているため、日々ベランダを使用している場合でも、表面がはがれにくいというメリットがあります。ウレタン防水と同じように、FRPをベランダに塗布してから硬化させますが、硬化速度が速いため工期も短く済みます。
ただし、紫外線に弱く、経年でひびや割れが生じる場合があります。また、木造のベランダや下地が鉄でできているベランダには施工が難しいことがデメリットです。
ベランダの床材交換
ベランダの雰囲気を変えたい場合は、床材を交換するリフォームがおすすめです。また定期的なメンテナンスとして、防水工事に加えて床材の交換を行う場合もあります。
ベランダに使用される床材としては、主に以下のようなものがあげられます。
床材の種類 | 特徴 |
---|---|
樹脂製床材 | ・耐久性や耐水性が高く、デザインも豊富 ・天然木床材やタイルのような高級感は出しにくい |
金属製床材 | ・軽量で耐久性、メンテナンス性が高い ・汚れを放置しているとサビが発生する |
天然木床材 | ・ナチュラルな雰囲気が魅力 ・腐食しやすいため、防水メンテナンスが重要 |
タイル系床材 | ・耐久性が高く、高級感が出しやすい ・日々の掃除やメンテナンスに手間がかかる |
床材交換のリフォーム費用は床材の種類によって異なりますが、一般的には5万円前後と比較的安価です。しかし「躯体自体が劣化している」「コンクリート内部の鉄筋がさびている」など劣化が大きい場合は、ベランダの全交換が必要になるケースもあります。
ベランダの屋根設置
雨や日差しを遮ったり、周囲からの目隠しとなったりするベランダの屋根は、リフォームで後付けすることが可能です。
ベランダの屋根にはフラットタイプとアールタイプの2種類があります。フラットタイプとは、カーブのない直線的な形状の屋根です。それに対してアールタイプは、カーブがついている屋根で、フラットタイプよりも雨除けや目隠し効果が高いことが特徴です。
フラットタイプに比べてアールタイプのほうが価格が高くなるため、設置の目的や予算に合わせて選ぶといいでしょう。
ベランダをリフォームで広げる(拡張工事)
ベランダの狭さを解消したい場合は、ベランダを広げる拡張工事という選択肢があります。ベランダの拡張工事には、主に次の3つの方法があります。
- 下の階の屋根に支柱を固定する「屋根置き式」
- 地面に支柱を固定する「柱建て式」
- 外壁に固定する「持ち出し式」
下の階の屋根に柱を立てて、ベランダを拡張する方法を「屋根置き式」といいます。屋根置き式では、建物の状態に合わせて柱を設置する屋根の補強工事が必要となりますが、シンプルな構造のベランダであれば比較的コストを抑えて拡張することが可能です。
屋根置き式に対して、地面から支柱を建ててベランダを拡張する方法は「柱建て式」といわれており、耐荷重性が高いため、広めのベランダの設置も可能となります。
外壁に固定されてる「持ち出し式」と呼ばれるベランダを拡張したい場合は、より広い既製品のベランダに交換する必要があります。その場合、既存のベランダを撤去してから躯体工事を行い、新しいベランダを設置するため、屋根置き式や持ち出し式に比べると、費用が高くなるのが一般的です。
ベランダをリフォームでなくす(撤去工事)
使用しなくなったベランダは、リフォームで解体・撤去することが可能です。ベランダの撤去工事の流れは以下のとおりです。
- 床材撤去
- フレームの解体
- 躯体部分の解体・撤去
- 柱の撤去(必要に応じて)
- 家の躯体補修(必要に応じて)
- 外壁補修(必要に応じて)
ベランダを撤去した場合、必要に応じて家の躯体補修や外壁補修が必要になる場合があります。ベランダの撤去のみであれば費用は10~15万円前後が目安ですが、これらの追加工事が入ると20~30万円ほどかかるケースもあります。
リフォームでベランダにサンルームを設置
「天候にかかわらず洗濯物を干したい」「子どもやペットが遊べるスペースが欲しい」という理由から、ベランダをサンルームにリフォームする人も増えています。
ベランダをサンルームにリフォームする方法としては、ポリカーボネート製の屋根と側面でベランダを囲う「テラス囲い」が一般的です。設置費用は40~80万円が相場ですが、グレードの高い製品を使用すると80万円以上かかるケースもあります。
ベランダの全交換
築年数が25年以上経過している家のベランダは、構造自体が劣化している可能性があるため、部分的なリフォームではなく「ベランダの全交換」という選択肢を検討してみましょう。
ベランダの全交換には、ベランダ拡張と同じく「屋根置き式」「柱建て式」「持ち出し式」の3つの方法があります。「屋根置き式」や「柱建て式」に比べて、躯体工事を伴う「持ち出し式」は交換費用が高くなる傾向にあります。
【費用別】ベランダリフォームの内容
ベランダのリフォーム工事の多くは、50万円未満でできるのが一般的です。しかし、工事の内容やリフォームの目的によっては50万円以上、100万円以上という費用がかかる場合もあります。
そこでここからは、費用別に可能となるベランダリフォームの内容を見ていきましょう。
50万円未満のベランダリフォーム
50万円未満のベランダリフォームでは、以下のような工事が可能です。
- ベランダの防水工事
- ベランダの床材交換
- ベランダの屋根設置
- ベランダの拡張工事(屋根置き式、柱建て式)
- ベランダの撤去工事(大規模な外壁補修なし)
- サンルームの設置(安価なテラス囲い製品を使用)
- ベランダの全交換(屋根置き式、柱建て式)
50万円未満でも、ベランダのリフォーム工事はひと通り実施可能です。ただし、リフォームの内容によっては施工方法や使用できる製品が限られる場合があります。また複数の工事を組み合わせると、50万円以上かかるケースもあるでしょう。
50万円以上~100万円未満のベランダリフォーム
50万円以上~100万円未満のベランダリフォームでは、以下のような工事が可能になります。
- 防水工事、床材交換、屋根設置など複数の工事の実施
- ベランダの拡張工事(躯体工事を伴う持ち出し式)
- ベランダの撤去工事(外壁補修を伴う)
- サンルームの設置(グレードの高いテラス囲い製品を使用)
- ベランダの全交換(躯体工事を伴う持ち出し式)
50万円未満のベランダリフォームと工事の内容は共通しているものもありますが、使用できる製品が増えたり、そのほかのリフォーム工事を追加できたりします。
100万円以上のベランダリフォーム
100万円以上のベランダリフォームになると、ベランダの広さを拡張したうえでサンルームを設置するなど、大規模な工事が可能となります。ベランダの使用用途を大きく変えたい場合や、ベランダを部屋の一部として活用したい場合が当てはまります。
ベランダリフォームを成功させるためのポイント
ここからはベランダリフォームで意識しておきたいことや、事前に確認しておくべき注意点など、リフォームを成功させるためのポイントについて紹介します。
リフォームの目的を明確にする
まずは、ベランダをリフォームする目的を明確にすることが大切です。
劣化や不具合を直したいのであれば、防水工事や床材交換といったメンテナンス工事が中心となります。メンテナンス工事に対して、ベランダの使用用途を変えたい場合は、ベランダを広げる拡張工事やサンルームの設置など、大掛かりな工事が必要になるケースもあります。
築年数が経過している場合は、防水工事や床材交換によるメンテナンスではなく、ベランダの全交換や撤去が適していることもあります。
ベランダリフォームの目的を明確にし、必要な予算と適切な工事を事前に把握しておきましょう。
ベランダは防水性・耐久性が重要
ベランダは屋外にあるため、雨風の影響を大きく受けます。屋根のあるベランダであっても、雨を完全に防ぐことはできません。
ベランダの防水性に問題があると、住まいの雨漏りを引き起こす可能性もあるため、リフォームをする際は防水性や耐久性の強化を意識しましょう。
ベランダの安全性も意識する
2階以上にあるベランダで注意したいのは、子どもの転落など事故です。ベランダリフォームをする際は、ベランダの安全性についても意識しておくことが大切です。
足をかけてよじ登れないように配慮された手すりや、すべりにくい床材を選ぶなど、リフォーム会社と相談しながら家族が安心して過ごせるベランダを目指しましょう。
「建ぺい率」に注意する
ベランダをサンルームにリフォームする場合などは、地域ごとに定められている「建ぺい率」にも注意しましょう。
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合であり、指定建ぺい率以上の増築は認められません。サンルームは建築基準法では「部屋」とみなされるため、設計によっては所定の建ぺい率を超えてしまう可能性もあります。
リフォームによるサンルームの設置を検討している場合は、実績豊富なリフォーム会社に相談することで、このようなリスクを回避しましょう。
「建築確認申請」が必要な場合も
リフォームでベランダを拡張したり、サンルームに変更したりするような「増築扱い」となるリフォームの場合、条件によっては「建築確認申請」が必要になるケースもあります。建築確認申請とは、新たな建築物を建てる際に、法律や条例に違反していないかを確認するための申請です。
ベランダの増築リフォームで建築確認申請が必要となるのは、以下の場合です。
- 準防火・防火地域内にある
- 準防火・防火地域外だが、10㎡を超える増築を行う
通常であれば、リフォーム会社が上記のような条件を把握していますが、ご自身でも事前に確認しておくことが大切です。
マンションの場合は管理規約を確認
マンションのベランダは、いわゆる「専有使用が認められた共有部分」に該当します。共有部分は居住者が勝手にリフォームすることはできません。そのため、リフォームが必要になった場合は、まずは管理規約を確認したうえで、マンションの管理会社や管理組合に相談しましょう。
ベランダリフォームでで失敗しないために信頼できるリフォーム会社に相談しよう
洗濯物を干したり、荷物を保管したりと、さまざまな用途があるベランダですが、経年劣化や使い勝手の悪さを感じたときはリフォーム工事を検討するのがおすすめです。ベランダのリフォームでは、劣化部分の修繕だけではなく、ベランダの拡張やサンルームの設置など、使用用途を大きく変えられる工事も可能です。
ベランダのリフォームをご検討中の方は、まずは実績豊富なリフォーム会社に相談してみることから始めましょう。