「階段の老朽化が気になる」「将来のために安全性の高い住まいづくりをしたい」とお考えの方は、階段のリフォームを検討してみましょう。
ここでは、階段のリフォーム費用や施工内容、リフォーム時の注意点などについて詳しく解説しています。階段リフォームで利用できる減税・補助金制度も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
階段リフォームの費用相場
階段リフォームの費用相場は、10万円未満から50万円以上までと幅広く、工事の内容によって異なります。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
手すりの設置 | 3万~12万円 |
滑り止めの設置 | 1万円~1.5万円 |
階段の上張り (カバー工法) | 15万円~30万円 |
勾配を緩やかに変更 (段数を増やす) | 25万円~50万円 |
階段下収納の設置 | 15万円~30万円 |
勾配を緩やかに変更 (階段の付け替え) | 60万円~100万円 |
階段の位置変更 | 100万円以上 |
階段用昇降機の設置 | 50万円~150万円 |
まずは、費用相場別に可能なリフォーム工事の内容を詳しく見ていきましょう。
15万円未満の階段リフォーム
15万円未満の階段リフォームでは、主に階段の安全性向上を目的とした部分的なリフォームが可能です。
手すりの設置
- 費用相場:3万~12万円
ご高齢の方やお子さんの安全性確保のために、階段の壁に手すりを設置するリフォームです。手すりの設置は比較的簡易なリフォームであり、階段リフォームの中では費用も安い工事といえます。
費用の目安は、手すり1mあたり5,000円~20,000円前後であり、直階段 (カーブのないまっすぐな階段) であれば3万円~7万円、カーブのあるかね折れ階段や折り返し階段であれば、5万円~12万円が目安になります。
滑り止めの設置
- 費用相場:1万円~1.5万円
滑り止めの設置とは、階段からの転落を防ぐために階段の各ステップに滑り止めシートを貼るリフォームです。簡易的なリフォームなので、リフォーム会社に依頼する方法以外にも、市販の滑り止めシートを購入してご自身で行うこともできます。
安全性の高い階段にするためには、剥がれにくく薄いタイプの滑り止めシートを選ぶのがポイントです。厚みのあるシートの場合、足先が段差に引っ掛かってしまい転倒する恐れがあります。
15万円以上50万円未満の階段リフォーム
15万円以上50万円未満の階段リフォームでは、階段の見た目や利便性を高める工事が可能になります。
階段の上張り (カバー工法)
- 費用相場:15万円~30万円
階段の上張りとは、既存の階段の床材の上から、新たな床材を重ね張りする方法のことで「カバー工法」とも呼ばれています。階段の床材を張り替える方法もありますが、手間や費用がかかるため、多くの場合はこの「上張り (カバー工法) 」で対応します。
階段の上張りは、老朽化した階段の見た目を一新できることに加えて、床材が二重になるため防音効果が高くなることもメリットのひとつです。
フローリング階段の上張りの場合、15万~30万円が費用相場ですが、フロアクッションの階段であれば、3万~5万円と比較的安価に施工が可能です。
勾配を緩やかに変更 (段数を増やす)
- 費用相場:25万円~50万円
勾配が急な階段は、足を滑らせたり転倒したりする恐れがあるため、使い勝手に不安を感じる人も多いでしょう。
リフォームで階段の段数を増やすことで、既存の階段をそのまま利用して勾配を緩やかに変更することが可能です。ただし、段数を増やして勾配を緩やかにする場合、階段自体の全長が長くなる点に注意しましょう。
階段下収納の設置
- 費用相場:15万円~30万円
階段下のデッドスペースを有効活用できる階段下収納の設置も人気です。
階段下収納の設置では、階段の下の壁面を解体してから造作収納を設置します。費用は収納スペースの大きさや使用する材料によって大きく異なります。
居住空間の広さを維持したまま新しい収納スペースを確保したい人は、ぜひ検討してみましょう。
50万円以上の階段リフォーム
50万円以上の階段リフォームでは、階段の付け替えや位置変更といった大がかりな工事が可能になります。また、階段の上り下りが難しいご高齢の方などのための「階段用昇降機」の設置も可能です。
勾配を緩やかに変更 (階段の付け替え)
- 費用相場:60万円~100万円
勾配が急な階段をリフォームする工事には、段数を増やす工事のほか、階段そのものを付け替える工事があげられます。まっすぐな直階段をカーブのある階段に変更する場合などに採用されます。
既存の階段を解体して、新しい階段を組み立てる作業が発生するため、段数を増やす工事よりも費用は高くなりがちです。
階段の位置変更
- 費用相場:100万円以上
階段の位置を変更するリフォームは、階段リフォームの中でも大がかりな工事になります。階段部分だけではなく、周囲の間取りや設計の変更を伴うケースもあり、工事の規模によっては「建築確認申請」が必要になることも少なくありません。
そのため、階段の位置変更を希望するのであれば、同時に家全体のフルリフォームを検討するのもおすすめです。
階段用昇降機の設置
- 費用相場:50万円~150万円
「階段用昇降機」とは、階段の上り下りが難しい方のために、座った状態のまま安全に階段の昇降が可能になるリフトのような機器です。
階段の壁面にレールを設置して、そのレールに沿うように椅子が昇降します。階段用昇降機の設置費用は50万円~150万円と幅広く、設置する製品の価格や階段の形状によって異なります。
階段をリフォームするメリット
2階建て以上の住宅では、階段は生活に欠かせない重要な設備です。
経年による劣化や不具合、またはライフスタイルや家族構成の変化に合わせてリフォームすることで、次のようなメリットが期待できます。
安全性が向上する
階段は勾配があるため、ご高齢の方や小さなお子さんが、足を滑らせたり転落したりする危険性もあります。特に急勾配の階段や滑りやすい床材の階段などは、危険も大きく、日々の暮らしに不安を感じてしまうこともあるでしょう。
滑り止めや手すりの設置、床材や勾配の変更などで、階段の安全性を高めれば、安心して快適な暮らしができるようになります。
見た目が一新される
階段は毎日の暮らしの中で、頻繁に使用する部分であり、年月を経るごとに見た目も劣化していきます。また、階段は意外と目につきやすい部分でもあり、見た目の老朽化が気になる場合も少なくありません。
階段の上張りリフォームを行えば、見た目が一新され、住まいが明るい印象に生まれ変わります。さらに、階段のリフォームに合わせて照明や壁紙も変更すると、雰囲気がガラッと変わるでしょう。
階段リフォームの注意点
住まいの安全性や美観を高める階段リフォームですが、リフォームの際には事前に知っておくべき注意点もあります。
階段の法定基準に注意する
建築基準法では、一般住宅の階段の寸法は以下のように定められています。
- 蹴上 (1段の高さ) :23cm以下
- 踏面 (階段の足をのせる面の奥行き) :15cm以上
- 階段と踊り場の幅:75cm以上
- 踊場の位置:直階段の場合、高さ400cmごと
築年数が経過している古い住宅では、この基準に沿った設計になっていない場合もあります。また上記はあくまで法律上の基準であり、基準の数字どおりに設計してしまうと、実際には使いやすい階段にならないケースも少なくありません。
階段リフォームを行う場合は、法律の規制を守ったうえで、使いやすい設計を検討しましょう。
耐震性への影響を考慮する
階段下収納の設置などで、一部壁面を解体する場合は、耐震性への影響に注意しましょう。
特にリフォーム箇所の周囲に構造を支える柱や筋交いがある場合は、安易なリフォームによって耐震性が損なわれてしまうリスクもあります。
階段リフォームを行う際は、住まい全体の耐震性を考慮したうえで、リフォーム会社とともに適切な設定を検討しましょう。
リフォーム中は階段が使用できない
階段の滑り止め・手すりの設置であれば、数時間~半日程度でリフォームは完了します。しかし階段の上張りは1~2日、勾配の変更は3日以上、階段の付け替えや位置変更になると1~2週間ほどの期間がかかります。
工事期間中は、基本的には階段は使用できなくなるため、生活に不便を感じることがあるかもしれません。特に工期が長くなる階段リフォームの場合、上階に行かなくても生活が困らないような準備をしておく必要があります。
階段のリフォームはDIYでも可能?
階段リフォームの中でも、滑り止めの設置はご自身でDIYすることも可能です。しかし滑り止めシートの種類や厚みなどは、慎重に選ぶ必要があるため、安全性に不安を感じる人はリフォーム会社に依頼するのをおすすめします。
また、階段の上張り (カバー工法) をDIYで検討する人もいますが、上張り前の下処理や正確な採寸などが求められる作業であり、素人の場合、失敗してしまう可能性もあります。
安全性を確保できるリフォームを行いたい場合は、専門のリフォーム会社に依頼しましょう。
知っておきたい!階段の種類と特徴
階段のリフォームについて調べていると「直階段」や「かね折れ階段」といった言葉を目にすることも多いでしょう。日本の住宅に使用される室内階段には、いくつかの種類がありそれぞれに特徴があります。
日本の住宅では、次の5種類が使用されているのが一般的です。
- 直階段
- かね折れ階段
- 折り返し階段
- 回り階段
- らせん階段
ご自宅の階段の種類や特徴を理解しておくと、適切なリフォームが可能になります。ここからは、各階段の特徴について紹介します。
直階段
直階段とは、まっすぐに上り下りするタイプの階段で、日本の多くの住宅で採用されています。
シンプルな形状であるため、省スペースでも設置が可能です。ただし、間取りによっては階段の勾配が急になってしまうこともあるため、踊り場を設けるなどの方法で昇降しやすい設計を検討する必要があります。
かね折れ階段
かね折れ階段とは、階段が途中で直角に折れ曲がるL字タイプの階段です。部屋の角部分にも設置が可能、階段下収納をつくりやすいといった特徴があります。
ただし直階段に比べると、広い設置スペースが必要になります。
折り返し階段
折り返し階段は、階段の途中で折り返しており、U字型やコの字型になるタイプの階段です。
折り返し部分が踊り場になっているため、階段の上り下りに注意が必要な高齢の方などでも昇降しやすいのが特徴です。また、勾配が緩やかになるので、安全性が高い階段ともいえます。
しかし、設置には広いスペースが必要となり、直階段やかね折れ階段よりも費用が高くなる点に注意しましょう。
回り階段
回り階段は、折り返し階段と同じようにU字型・コの字型になるタイプの階段ですが、折り返し部分が踊り場になっていないことが特徴です。
折り返し階段のように緩やかな勾配を実現できますが、踊り場を設けないため、折り返し階段よりも省スペースでの設置が可能です。
らせん階段
らせん階段は、文字通り階段がらせん状になっているものです。デザイン性が高く、リビング階段としても採用されています。
洗練された印象がらせん階段の魅力ですが、高齢の方や小さな子供の昇降には注意が必要です。また、通常の階段と異なる設計になるため、設置費用が高くなりやすいことも覚えておきましょう。
階段リフォームで利用できる減税・補助金
階段リフォームの費用を抑えたい人は、減税・補助金制度の利用を検討してみましょう。ここからは、階段のリフォーム時に検討できる減税・補助金制度の例を紹介します。
※本補助金に関する記載は2023年1月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
バリアフリー改修工事の住宅特定改修特別税額控除
「バリアフリー改修工事の住宅特定改修特別税額控除」とは、所定の条件を満たしたうえで「階段の設置 (既存の階段の撤去を伴うもの) または改良によりその勾配を緩和する工事」を行うと、一定の金額をその年分の所得税額から控除できる制度です。
「バリアフリー改修工事の住宅特定改修特別税額控除」は、住宅ローンを利用していなくても適用を受けることができます。
※本補助金に関する記載は2023年1月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
介護保険による住宅改修補助金
介護保険は、介護が必要な人を支援する社会保険です。介護保険のサービスのひとつである「住宅改修補助金」では、条件を満たした場合に上限20万円の補助金が支給されます。
介護保険における住宅改修補助金の対象となる工事には「手すりの取付け」や「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」が含まれます。
そのため階段リフォームの内容によっては、補助金の対象となる場合があります。
※本補助金に関する記載は2023年1月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
自治体の補助金制度
階段リフォームで利用できる補助金には、各自治体が実施しているものもあります。
例えば、鹿児島市の「高齢者住宅改造費の助成等」では、下記の階段リフォームが補助金の対象になっています。
- 対象者の生活動線上への手すりの設置
- 屋内・屋外階段昇降機の設置
お住まいの地域での補助金制度は、各自治体のHPなどで確認できます。また、リフォーム会社に利用できる補助金の有無を問い合わせてみるのもいいでしょう。
※本補助金に関する記載は2023年1月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
階段リフォームで失敗しないために信頼できるリフォーム会社に相談しよう
階段のリフォームには、さまざまな工事があり、費用相場も幅広いことが特徴です。また、事前に知っておくべき注意点などもあります。
安全性や利便性を高めるためにも、住まいの状態に合わせた階段のリフォームを検討することが大切です。まずは、階段のリフォームの実績が豊富な施工会社に相談してみてはいかがでしょうか。