古民家リノベーションの魅力とは?費用相場やメリット・デメリットを解説

家全体リフォーム

「古民家リノベーション」は、日本家屋の魅力を活かしながら時代に合わせた住まいづくりができるため、近年多くの人に注目されています。

そこでこの記事では、古民家リノベーションの費用相場やメリット・デメリットなどを詳しく紹介します。古民家のリノベーションで利用できる補助金についても解説しているので、ぜひ住まいづくりの参考にしてください。

古民家のリノベーションとは?

日本の伝統的な住まいの魅力を活かした「古民家リノベーション」ですが、そもそも古民家とはどんな家を指すのか、リノベーションとはどういった工事なのか、などの疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。

そこでまずは、古民家リノベーションの基本について詳しく見ていきましょう。

そもそも古民家とは?

「古民家」に明確な定義はありませんが「築50年以上を経過した建物」を指すのが一般的です。しかし築50年以上を経過していても、中には現代的な外観の住宅もあり、すべての築50年以上の住宅が「古民家」であるとはいえないのが実情です。

一般社団法人全国古民家再生協会では、古民家を「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする」と定義しています。

このことからも、家づくりにおいての古民家は「日本の伝統的な建築方法で建てられており、日本家屋の特徴を有する築50年以上の住宅」と考えるのが適しているでしょう。

日本の伝統的な建築方法とは、木の梁と柱で建物を支える木造軸組み工法のことです。また、日本家屋の特徴としては、茅葺屋根や日本瓦屋根、土間、太い梁や柱などが該当します。

リノベーションとリフォームの違い

古民家のリノベーションを理解するためには、リノベーションとリフォームの違いについても知っておく必要があります。

一般的に家づくりにおけるリノベーションとリフォームが、下記のように区別されています。

  • リノベーション:住まいに新たな付加価値をプラスする改修工事
  • リフォーム:住まいの劣化・不具合をもとに戻す修繕工事

つまり古民家のリノベーションは「築50年以上の日本家屋に、新たな付加価値をプラスする改修工事」と考えられます。経年劣化や建物の不具合を修繕するだけではなく、日本家屋らしい魅力を活かしながら、現代の生活にマッチするような機能性やデザインといった付加価値をプラスする工事になります。

それに対して古民家のリフォームは、経年劣化や不具合の修繕が中心となります。

古民家リノベーションの費用相場

古民家リノベーションの費用相場は「500万円~3,000万円」と幅があります。リノベーション工事の内容や古民家の状態によっては、3,000万円以上かかるケースもあります。

500万円~800万円の古民家リノベーション

比較的費用を抑えた古民家リノベーションでは、内装や設備を総入れ替えする「表層リノベーション」を行います。表層リノベーションの費用相場は「500万円~800万円」が一般的です。

表層リノベーションの場合、古民家の見た目や設備が刷新されるため、現代の暮らしに合わせた家づくりが可能です。しかし古民家の構造部分を補強することは難しいため、十分な耐震性や断熱性を有する古民家でしか対応できません。

1,000万円~2,000万円の古民家リノベーション

築50年を超えた住宅は、一般的には内装や外装、設備の劣化が著しいため、柱や梁などの構造部分のみを残して全体を解体してつくりなおす「スケルトンリノベーション」を行うケースも少なくありません。スケルトンリノベーションになると費用は「1,000万円~2,000万円」が目安です。

さらに耐震工事や断熱工事などが必要な場合も多く、これらの工事が追加されると、その分費用も高くなります。

3,000万円以上の古民家リノベーション

古民家の中には、50~60坪以上の比較的広い日本家屋もあります。このような古民家をスケルトンリノベーションしようと思うと、費用は3,000万円以上かかるのが一般的です。

3,000万円以上となると、新築住宅を購入する費用と変わらないケースもあるでしょう。

古民家リノベーションのメリット・魅力

注目されている古民家リノベーションですが、具体的にはどのようなメリットや魅力があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

日本家屋の魅力を活かせる

日本家屋といえば、柱や梁、縁側、土間など、和の趣を感じられる造りが魅力です。また年月を経た木造の柱や梁には、独特の経年美が感じられます。

古民家リノベーションでは、これらの日本家屋の魅力を残したまま、機能性やデザイン性を高めることができます。現代的な新築住宅とは異なる唯一無二の魅力こそが、古民家リノベーションの醍醐味ともいえるでしょう。

資源保護につながる

古民家の柱や梁といった構造部分には、ヒノキやケヤキといった建築材が使われています。これらの建築木材は強度が高く、また現在では容易に手に入らないようなものも少なくありません。

歴史のある建物をリノベーションして、貴重な建築材を残すことは、資源保護にもつながります。さらに建て替えのためのエネルギーやCO2排出を削減できることも、環境保護の観点からも注目されています。

固定資産税を抑えられる

建物の固定資産税は「課税標準額×税率(1.4%)」で計算されます。建物は年月とともに価値が下がるとされているため、築年数が経過すると課税標準額が落ちていきます。

そのため、古民家をリノベーションした場合、新築住宅よりも固定資産税が抑えられる可能性が高いでしょう。

ただし、固定資産税の算出に関しては、各自治体で細かな基準が定められているため、すべてのケースで固定資産税が抑えられるとは限りません。古民家をリノベーションした場合の固定資産税については、事前に各自治体に確認しておきましょう。

新築に近い機能性が実現できる

古民家リノベーションでは、古き良き日本家屋の魅力は活かしたまま、内装や設備を総入れ替えします。また、スケルトンリノベーションをする場合は、建物の耐震性や断熱性なども大きく向上します。

そのため、古民家の趣を楽しめると同時に、新築住宅と同等の機能性を実現できることが魅力のひとつです。

ライフスタイルに合わせた間取りが実現できる

築50年以上の日本家屋の場合、間取りの設計が現代の生活に合わないケースも少なくありません。しかし古民家をスケルトンリノベーションすれば、間取りもライフスタイルに合わせて変更可能です。

日本伝統の木造軸組工法は、建物を柱や梁で支える構造になっています。そのため仕切り壁を取り除き、現代的な広々としたリビングダイニングをつくることもできます。

古民家リノベーションのデメリット・注意点

伝統的な住宅の魅力を活かしながら、現代的な生活に合わせた住まいづくりが可能な古民家リノベーションですが、事前に知っておきたいデメリットや注意点もあります。デメリットや注意点を理解して適切な対応を行うことが、古民家リノベーションを成功させるポイントともいえるでしょう。

ここからは、古民家リノベーションのデメリットや注意点について詳しく解説します。

耐震性が低い場合がある

築50年を超える古民家は、耐震性が低い可能性があります。
現在の耐震基準(新耐震基準)は1981年に定められており、それ以前に建てられた古民家は旧耐震基準に沿って建てられています。そのため、築50年以上の建物の多くは、現在の耐震基準を満たしていない可能性があるのです。

震度5程度の地震に対する耐震性震度6~7程度の地震に対する耐震性
新耐震基準建物の部材の各部が損傷を受けない倒壊または崩壊がない
旧耐震基準倒壊または崩壊がない
※損傷を受ける可能性はある
規定なし

上記のように新耐震基準と旧耐震基準とでは、地震に対する耐震性に大きな違いがあります。

旧耐震基準では、震度5程度の地震に対して「倒壊または崩壊がない」としていますが、建物が損傷を受ける可能性は大いにあります。繰り返し震度5程度の地震があった場合、安全性は確保できないかもしれません。

古民家をリノベーションする場合は、事前に建物の耐震性診断を行い、状況に応じて耐震工事をする必要があるでしょう。

断熱性・気密性が低い場合がある

古民家が建てられた時代は、現代ほど冷房や冷蔵といった設備が整っていませんでした。そのため夏でも快適に過ごせるように、通気性を重視した構造になっており、断熱性や気密性といった部分は現代の住宅よりも劣っています。そのままでは、冬の時期などは室内が寒く、暖房費用がかさんでしまうでしょう。

古民家リノベーションで快適な暮らしを実現するためには、適切な断熱工事が必要になります。断熱工事は表層リノベーションでもある程度は可能です。古民家リノベーションを行う際は、断熱工事の費用も予算に組み込んでおきましょう。

バリアフリー工事が必要な場合がある

古民家はバリアフリーの概念がない時代に建てられています。そのため、室内に段差が多く、ご高齢の家族との暮らしや将来の生活には不安を感じるでしょう。

ご高齢の家族がいる場合や、長きにわたって暮らすことを考えている場合は、室内の段差をなくすバリアフリー工事も念頭に置いて、リノベーション計画を立てましょう。

入居までに時間がかかる

古民家リノベーションの工事期間は、古民家の状態や工事の内容によって前後しますが、一般的には「3~6ヶ月」が目安となります。リノベーションの打ち合わせに時間を要する場合、さらに期間は長くなります。

建売住宅や建築済みのマンションであれば、購入後すぐに入居できます。しかし古民家を購入してからリノベーションする場合、購入から3~6ヶ月ほどは入居できないため、その間の住まいや家財の保管場所などはしっかり確保しておきましょう。

予想よりも費用がかかる場合がある

築50年を超える古民家は、一般的な中古住宅に比べると、構造や設備、内装などが想像以上に劣化していることも少なくありません。また現代の暮らしに合わせた機能やデザイン性にこだわりたいと思うと、どうしても費用がかさんでしまうでしょう。

そのため、古民家リノベーションでは「当初の想定よりも費用が高くなってしまった!」というケースも多く見られます。

予算内で理想の住まいづくりを実現するためには、物件選びの際から建物の劣化具合などを入念に調査しておくことが大切です。また、リノベーションの内容を明確にし、優先順位をつけることで、予算内での調整がしやすくなります。

おしゃれな古民家リノベーションのポイント

趣のある古民家の魅力を最大限に生かしたリノベーションを成功させるためには、次の2つのポイントを意識しましょう。

  • 残せるものは可能な限り残す
  • 自然素材を使用する

残せるものは可能な限り活かす

古民家リノベーションの最大の魅力は、古民家ならではの和の風合いを生かすことです。そのためには、残せるものは可能な限り取り壊さず、リノベーションで活かすことが大切です。

例えば、家を支える大きな柱や梁には、ヒノキやケヤキといった強度の高い高級木材が使用されていることがあります。これらの木材は、年月を経ても家を支えてくれるだけではなく、経年による美しさも特徴です。

こういった建築材を活かせるのは、新築でできない古民家リノベーションならではの魅力といえるでしょう。

自然素材を使用する

古民家のような日本家屋は、木造が基本です。木造ならではの木のぬくもりを活かすためには、リノベーションの際も木や石、漆喰などの天然素材を取り入れるのがおすすめです。

天然素材は、見た目の質感の良さだけではなく、調湿作用など日本の風土に合わせた機能性も期待できます。おしゃれな見た目とともに、快適な住まいを実現できるでしょう。

古民家リノベーションでの物件選びの注意点

魅力あふれる古民家リノベーションですが、成功を左右するのはリノベーションする物件選びにあるといっても過言ではありません。

ここからは、古民家リノベーションに適した物件選びのポイントや注意点について解説します。

立地についての注意点

築年数を経た古民家は、市街地ではなく郊外にあることも少なくありません。

自然豊かな環境が魅力のひとつですが、実際に生活することを考えた場合、交通や生活の利便性についても慎重に検討しましょう。また水道やガス、電気といった生活インフラやインターネット環境がしっかり整備されているかどうかも、重要なポイントです。

建物についての注意点

古民家リノベーションでの物件選びでは、建物の劣化状況を正しく見極めることが重要です。しかし、見た目の劣化具合はわかっても、構造や土台などの劣化状況を素人が判断するのは非常に困難です。

建物の劣化状況を詳しく把握するためには、専門家によるホームインスペクションがおすすめです。

ホームインスペクションでは、住宅診断士などの専門家が、第三者の立場から住宅の劣化状況や欠陥の有無を診断し、改修が必要な個所を特定します。
ホームインスペクションを行うことで、住宅の劣化状況を把握できるとともに、リノベーション費用の見積もりにも役立ちます。

古民家リノベーションで利用できる補助金

古民家リノベーションは、古民家の状態によっては大きな費用がかかる場合もあります。そこでここからは、古民家リノベーションで検討できる補助金制度について紹介します。

リノベーションで検討できる補助金には、国の補助金と各自治体の補助金があります。ここでは国の補助金の例として「長期優良住宅化リフォーム推進事業」、自治体の補助金の例として「鹿児島市」と「日置市」の補助金について紹介します。

※補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。

長期優良住宅化リフォーム推進事業

長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、良質な住宅のストックや子育てしやすい環境の整備を目的とした国の事業です。

既存住宅の長寿命化や省エネ化にかかわるリフォームや、子育て世帯向けのリフォームを行うと、所定の条件を満たした場合に補助金が受けられます。

対象となる代表的なリフォーム工事は、以下のとおりです。

  • 省エネルギー対策工事
  • 耐震工事
  • 構造躯体等の劣化対策
  • バリアフリー改修工事
  • インスペクションで指摘を受けた箇所の改修工事
  • テレワーク環境設備改修工事
  • 高齢期に備えた住まいへの改修工事 など

※令和4年度長期優良住宅化リフォーム推進事業は、2022年12月5日より受付を再開。
※本補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。

鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業

鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業は、自治体による補助金事業で、住宅の耐震診断、耐震改修工事及びリフォームに要する費用の一部を補助します。

対象となるのは、以下の費用です。

  • 耐震診断費用
  • 耐震改修工事費用
  • 耐震改修工事とあわせて行うリフォーム費用
  • 空き家の活用者・県外からの移住者が行うリフォーム費用

所定の条件を満たすことで、上記費用の一部が補助されます。

※本補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。

日置市 空家改修事業

日置市 空家改修事業は、自治体の補助金事業です。空き家の有効活用による定住促進を目的としており、一定の条件を満たした場合に空き家の改修に対して補助金が受けられるものです。

対象となる空き家の条件には「現に居住者のいない築年数が20年以上の建物」が含まれているため、古民家のリノベーションでも利用できる可能性があります。

※本補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。

古民家リノベーションで失敗しないために信頼できるリフォーム会社に相談しよう

古き良き日本家屋の魅力を活かしながら、現代の暮らしに合わせた機能性の高いマイホームを手に入れたい人には、古民家のリノベーションがおすすめです。

ただし、古民家をリノベーションする際は、耐震性や断熱性、気密性などの機能性を高めるための工事が必要になるケースも少なくありません。

古民家リノベーションに興味のある方は、まずは実績豊富なリフォーム会社に相談することから始めてみましょう。

タイトルとURLをコピーしました