「長年住み続けてきたマイホームを新しくしたい」「中古住宅を購入して、住みやすい家をつくりたい」とお考えの方には、住宅のフルリフォームがおすすめです。
この記事では、フルリフォームの費用相場や戸建てとマンションとの違い、フルリフォームのメリット・デメリットなどを詳しく解説します。フルリフォームの際に検討できる補助金についても紹介しているので、ぜひマイホームづくりにお役立てください。
フルリフォームとは?
一般的に「リフォーム」というと、劣化や不具合がある部分を修繕する住宅改修工事のことを指します。それに対して「フルリフォーム」は、住まいを全面的に改修する大がかりな工事になります。
リフォームと似た言葉に「リノベーション」というものがありますが、リノベーションは住まいに新たな付加価値をプラスする改修工事を意味するのが一般的です。
ただし、これらの言葉は明確には区別されていません。特に住まいを全面的に改修するフルリフォームと、大がかりな工事で住まいに新たな付加価値をプラスするリノベーションは、時に同じような意味を持つ場合もあります。
フルリフォームの費用相場 (戸建てとマンション)
古くなった住まいを刷新できるフルリフォームですが、気になるのはその費用相場ではないでしょうか?
フルリフォームの費用相場は、戸建てとマンションで異なります。
- 戸建てのフルリフォーム:500万円~2,000万円前後
- マンションのフルリフォーム:300万円~1,500万円前後
さらに工事の内容によっても、費用相場は前後します。ここからは戸建てとマンションに分けて、それぞれの費用相場を詳しく見ていきましょう。
【戸建て】フルリフォームの費用相場
戸建てのフルリフォームでは、次の3つのパターンが考えられます。
- 500万円~800万円:表層リフォーム
- 1,000万円~1,500万円:内部のスケルトンリフォーム
- 2,000万円前後:外壁も含めたスケルトンリフォーム
500万円~800万円のフルリフォーム
500万円~800万円前後で可能な戸建てのフルリフォームは、内装や設備を刷新する「表層リフォーム」になります。壁紙 (クロス)や床材の張り替えや水回り設備の入れ替えによって、まるで新築のような見た目を実現できます。
ただし、表層リフォームでは、間取りや設計を変更することはできません。また耐震性や断熱性といった住まいの機能を、大幅に高めることも難しいでしょう。
そのため、構造自体の劣化がそれほど著しくない築10~15年前後の物件に適しています。
1,000万円~1,500万円のフルリフォーム
1,000万円~1,500万円の戸建てフルリフォームになると、家の柱や梁といった構造部分と外壁を残して、内部を解体する「内部スケルトンリフォーム」が可能です。
内部スケルトンリフォームでは、内装や設備の刷新だけではなく、間取りや設計の変更も可能です。また壁に断熱材を入れることで、住まいの機能性を高めることもできます。
2,000万円前後のフルリフォーム
2,000万円前後の戸建てフルリフォームでは、内装だけではなく外壁も解体するスケルトンリフォームが可能です。
間取りの変更や断熱性の向上はもちろん、外壁の改修工事や基礎の補強工事ができるため、住まいの機能性は大幅に向上します。
特に1981年より以前に建てられた住宅では、現在の耐震基準を満たしていない場合もあります。外壁や基礎部分が劣化していることも多いため、外壁を含めたスケルトンリフォームを行うケースが多いでしょう。
【マンション】フルリフォームの費用相場
マンションは、管理規約によってリフォームできる場所が制限されています。基本的には居住者の「専有部分」のみリフォームが可能であり、「共用部分」に関しては、リフォームが難しい場合もあります。
マンションの専有部分と共用部分は、以下のとおりです。
- 専有部分
リビングやダイニングなどの居住スペース、玄関ドアの内側塗装、メーター以降の配管・配線、共用管までの排水管など - 共用部分
外壁、窓、バルコニー、玄関ドア、マンションの廊下、エレベーターなど
マンションのフルリフォームでは、次の2つのパターンが考えられます。
- 300万円~700万円:表層リフォーム
- 700万円~1,500万円:内部のスケルトンリフォーム
マンションでは、内装や設備を入れ替える表層リフォームや、内部のみ解体するスケルトンリフォームは可能ですが、外壁まで含むスケルトンリフォームはできません。
300万円~700万のフルリフォーム
マンションのフルリフォームの中でも、300万円~700万円前後となると、表層リフォームが一般的です。
マンションの居住スペースは専有部分になるため、フルリフォームによる壁紙 (クロス)や床材の張り替え、水回り設備の入れ替えなどが可能です。
ただし、マンションの場合は、管理規約で床材の遮音等級などが決められていることもあります。
700万円~1,500万円のフルリフォーム
700万円~1,500万円前後になると、内装や設備だけではなく仕切り壁などを撤去する内部のスケルトンリフォームが可能です。
スケルトンリフォームを行えば、マンションでも間取りの変更ができます。ただし、マンションの場合は、構造上撤去できない仕切り壁があることも多く、間取り変更が制限されるケースも少なくありません。
部位別のリフォーム費用相場
フルリフォームの費用の内訳を理解するためには、各部位別のリフォーム費用の相場を知っておくことが大切です。
水回りのリフォーム
リフォーム箇所 | 費用相場 |
---|---|
トイレ | トイレ交換を含むリフォーム:10万円~30万円 |
キッチン | ユニットバスの交換:50万円~100万円 |
お風呂 | キッチン全体の交換:50万円以上 |
洗面所 | 洗面台交換+内装リフォーム:20万円~50万円 |
内装のリフォーム
リフォーム箇所 | 費用相場 |
---|---|
壁紙クロスの張り替え | スタンダードグレードの壁紙:800~1,000円/㎡ ハイグレードの壁紙:1,000~1,500円/㎡ |
床材の張り替え | 張り替え工法:14,000~20,000円/㎡ 重ね張り工法:9,800~17,000円/㎡ |
外装のリフォーム
リフォーム箇所 | 費用相場 |
---|---|
外壁 | 外壁塗装:60万円〜180万円 帯壁の張り替え:150万円~300万円 |
屋根 | 屋根塗装:30~70万円 屋根の葺き替え:100~250万円 |
フルリフォームのメリット
住み慣れた我が家や、購入した中古住宅をフルリフォームすると、以下のようなメリットが期待できます。
- 新築、建て替えよりも費用を抑えられる
- 間取り変更も可能
- 再建築不可物件でも住まいを新しくできる
- CO2排出量や廃棄物の削減につながる
それぞれ詳しく解説します。
建て替えや新築よりも費用を抑えられる
フルリフォームでは、今ある住まいの構造部分はそのままに、内装や設計などをつくり替えることが可能です。
それに対して建て替えは、一度家を取り壊してイチから作り直す工事であり、解体費用や撤去費用、構造部分の建築費用などが発生します。また新築で家を建てる場合は、新たに土地を購入するなど大きな費用も発生するケースもあるでしょう。
フルリフォームであれば、建て替えや新築よりも費用を抑えられて、思い出のあるマイホームを残すことが可能です。
間取り変更も可能
部分的なリフォームは、使い勝手の悪くなった部分を改修することは可能ですが、間取りや設計の変更はできません。
それに対して、フルリフォームの中でも内部や外部を解体するスケルトンリフォームは、間取りや設計を変更することができます。家族構成やライフスタイルの変化に合わせて、住まいをつくり替えられるので、使い勝手や住み心地も向上するでしょう。
再建築不可物件でも住まいを新しくできる
再建築不可物件とは、一度建物を取り壊してしまうと、新たな建物を建築できない物件のことです。
再建築不可物件に該当するのは、「都市計画区域」と「準都市計画区域」にある以下のような物件です。
- 建物の敷地が建築基準法が定める道路に一切接していない
- 建物の敷地が建築基準法が定める道路と接しているが、その幅が2m未満である
- 建物の敷地が幅員4m以下の道路や私道としか接していない
上記のような再建築不可物件では、住まいを取り壊しての立て直しは認められません。しかしフルリフォームであれば、あくまで住宅改修の範囲にとどまるため、条件を満たせば再建築不可物件でも住まいを新しくすることが可能です。
CO2排出量や廃棄物の削減につながる
フルリフォームで既存の家を刷新し、長く住み続けることは、CO2排出量や廃棄物の削減といった環境保護にもつながります。
フルリフォームの場合、今ある建物を活用するため、新築や建て替えに比べると使用する資材の量や施工時のエネルギー消費を削減できます。
実際に、金沢工業大学 建築学科 佐藤考一研究室とりのべる株式会社の共同研究によると、既存建物をフルリフォーム (リノベーション)した場合と、同規模の新築に建て替えた場合を比較した結果、最大76%のCO2排出量の削減、最大96%の廃棄物排出量の削減が可能であることがわかっています。
フルリフォームのデメリット
新築や建て替えよりも費用を抑えて、住まいを新しくできるフルリフォームですが、事前に知っておくべき次のようなデメリットもあります。
- 建て替えや新築に比べると自由度が下がる
- 建物の状態によっては費用が高くなる場合もある
ここからはフルリフォームのデメリットとその対策方法について、詳しく見ていきましょう。
建て替えや新築に比べると自由度が下がる
フルリフォームの中でも、スケルトンリフォームは、建物を支える梁や柱を残して解体するため、間取りや設計を変更可能です。しかし、構造上どうしても撤去できない壁がある場合は、間取りが制限される場合もあります。特にマンションの場合は、管理規約でリフォームの範囲が制限されているケースも少なくありません。
それに対して、建て替えや新築であれば、イチから住まいを設計できるため自由度は高くなります。
フルリフォームでライフスタイルや家族構成に合わせた理想の住まいをつくるためには、事前に制限が入る範囲をしっかり理解しておくことが大切です。
戸建ての場合は、家の構造上撤去できない壁の位置などをしっかり把握しておきましょう。
マンションの場合は、管理規約を確認し、リフォームの際は管理会社や管理組合と事前に打ち合わせをすることが大切です。
建物の状態によっては費用が高くなる場合もある
フルリフォームでは、建物の構造を支える柱や梁を残した状態でつくり替えます。しかし、築年数を経過した住宅は、耐震性や断熱性、気密性といった快適で安全な暮らしを守る機能が低い状態のものも少なくありません。
特に1981年より前に建てられた住宅は、現在の耐震基準ではなく旧耐震基準に沿って建てられた建物もあります。
建物の状態によっては、耐震工事や断熱工事など機能性を高める追加工事が発生する場合があります。また築30年以上を超えている場合、給排水管の交換が必要になるケースもあります。これらの工事を行うと、その分費用も高くなるでしょう。
建物の劣化状況を把握して、必要な工事を見極めるためには、住宅診断士などの専門家によるホームインスペクション (住宅診断)を受けるのもひとつの方法です。
フルリフォームの工事期間
フルリフォームを行う場合、工事の期間は以下が目安となります。
- 表層リフォーム:3カ月前後
- スケルトンリフォーム:4カ月以上
一般的な建て替えの工事期間は5~8カ月が目安であり、建て替えに比べるとフルリフォームは工期も短いといえるでしょう。ただし、フルリフォームの期間中は、仮住まいを用意したり家財を別の場所で保管したりするケースもあります。その場合、仮住まいやレンタル倉庫の賃料などの費用が発生します。
フルリフォームで利用できる補助金制度
フルリフォームは、工事の内容によっては1,000万円や2,000万円以上の費用が発生する場合もあります。費用を抑えてフルリフォームをしたい場合は、国や自治体の補助金制度についてもチェックしておきましょう。
ここからは、フルリフォームで活用を検討できる補助金制度について解説します。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、国が行う補助金事業であり、良質な住宅のストックや子育てしやすい環境の整備を目的としています。
以下のような幅広いリフォーム工事が対象となっているため、住まいのリフォームをご検討中の方はチェックしてみましょう。
対象となるリフォーム工事の例
- 省エネルギー対策工事
- 耐震工事
- 構造躯体等の劣化対策
- バリアフリー改修工事
- インスペクションで指摘を受けた箇所の改修工事
- テレワーク環境設備改修工事
- 高齢期に備えた住まいへの改修工事 など
対象となる建物
- 既存の戸建て住宅、および共同住宅
補助金を受けるための条件
- リフォーム工事前にインスペクションを実施し、維持保全計画及びリフォームの履歴を作成すること
- リフォーム工事後に指定の性能基準を満たすこと
- 指定の性能項目のいずれかの工事を行うこと
- 住戸面積の確保、居住環境、維持保全計画の策定の要件に適合すること
※令和4年度長期優良住宅化リフォーム推進事業は、2022年12月5日より受付を再開。
※本補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
介護保険
介護保険とは、日本の公的な社会保険制度です。介護保険制度では、対象となるリフォーム工事 (主にバリアフリーに関する住宅改修など)に対して補助金が支給されます。
対象となるリフォーム工事の例
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑り防止、移動の円滑化のための床材などの変更
- 引き戸などへの変更
- 洋式便器などへの変更 など
対象となる人
- 第1号被保険者 (65歳以上の高齢者)または第2号被保険者 (40~64歳の特定疾病患者のうち介護が必要になった人)
- 介護保険の要支援1~2、もしくは要介護1~5のいずれかの認定を受けている人
- 自宅 (介護保険被保険者証に記載されている家)に住んでいる人
※上記3点を満たす人
※本補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
各自治体の補助金制度
リフォームに関する補助金制度は、各自治体でも実施しています。例えば、鹿児島県では「鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業」「垂水市 住宅リフォーム促進事業」などのリフォーム補助金制度があります。
鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業
鹿児島市 安全安心住宅ストック支援事業では、住宅の耐震診断、耐震改修工事及びリフォームを支援しており「断熱改修工事」「外壁、屋根塗装工事」「そのほか屋内のリフォーム工事」などが補助金の対象となっています。
垂水市 住宅リフォーム促進事業
垂水市 住宅リフォーム促進事業は、地域経済の活性化と快適な住環境の整備、子育て世帯の支援を目的としています。垂水市内の住宅リフォーム促進事業登録工事業者に依頼したリフォーム工事に対して、補助金を支給しています。
※本補助金に関する記載は2022年12月現在の情報です。最新の情報については、各公式サイトにてご確認ください。
フルリフォームで失敗しないために信頼できるリフォーム会社に相談しよう
戸建て住宅やマンションのフルリフォームは、内装や設備を新しくできるだけではなく、間取りを変更することも可能です。既存住宅の構造躯体を活用するため、建て替えや新築よりも費用や工期を抑えやすく、環境にもやさしいことがメリットです。
住まいのフルリフォームの費用相場は「300万円~2,000万円以上」であり、工事内容によって大きく変わります。
フルリフォームをお考えの方は、まずは実績豊富なリフォーム会社に相談することから始めてみましょう。