ライフスタイルや家族構成の変化によって「住まいが手狭になった」「住まいに新しい機能をプラスしたい」という場合、家を増築するという選択肢があります。
この記事では、家の増築について工事内容ごとの費用相場やメリット・デメリットを詳しく解説します。増築でおしゃれな住まいを実現するためのポイントや、事前に知っておくべき注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
増築とは?
増築とは「既存の家を解体せずに、敷地内での床面積を増やす工事」です。
家の床面積を増やすことで、居住空間を広くしたり住まいに新しい機能や付加価値をプラスしたりできます。
増築と改築の違い
増築と似ている言葉に「改築」がありますが、厳密には両者の意味合いは異なります。
増築が敷地内で「床面積を増やす工事」であるのに対し、改築は「床面積を増やさず、間取りや構造、設備を変更する工事」のことをいいます。つまり増築と改築の大きな違いは、床面積を増やすか増やさないかにあります。
ただし、どちらも既存の住宅を改修するリフォーム工事であるため、あわせて「増改築」と呼ばれることもあります。
増築と建て替えの違い
増築が「既存の家を解体せずに行う工事」であるのに対し、建て替えは「既存の家を基礎部分から解体して、立て直す工事」のことをいいます。
建て替えでは、基礎部分や構造躯体を含めて住まいを一新できるため、家の機能性やデザイン性の大幅な向上が可能です。
ただし増築に比べて大がかりな工事になるので、費用も高くなります。また土地が「再建築不可物件」に指定されている場合は、家の建て替えはできない点に注意しましょう。
【工事内容別】増築の費用相場
増築の費用相場について詳しく紹介します。増築には、さまざまなケースがあるため、工事内容別に費用相場を解説します。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
1階に部屋を増築する | ・木造:35~40万円/1畳 ・鉄骨・鉄筋コンクリート:50~55万/1畳 |
水回りを増築する | ・トイレ:70~200万円 ・浴室:75~250万円 ・キッチン:90~400万円 |
離れを増築する | ・木造:30~50万円/1畳 ・プレハブ:25~35万円/1畳 |
平屋を2階建てに増築する | ・50~100万円/1畳 |
ベランダやバルコニーを増築する | ・25~50万円 |
サンルームを増築する | ・1階にサンルームを設置:50~200万円 ・ベランダをサンルームに変更:40~80万円 |
ガレージ・カーポートを増築する | ・1台分ガレージ:100~300万円 ・1台分カーポート:20~60万円 |
1階に部屋を増築する費用
- 木造:35~40万円/1畳
- 鉄骨・鉄筋コンクリート:50~55万/1畳
1階部分に部屋を増築する工事では、建物の構造によって費用相場は異なります。木造のほうが鉄骨・鉄筋コンクリートよりも費用は安くなるのが一般的です。
ただし部屋の形や内装、収納の有無によっても費用は前後します。
部屋の広さ別の費用目安は以下のとおりです。3畳は105〜165万円、6畳は210〜330万円、8畳は280〜440万円、10畳は350〜550万円が目安となります。
木造 | 鉄骨・鉄筋コンクリート | |
---|---|---|
3畳 | 105~120万円 | 150~165万円 |
6畳 | 210~240万円 | 300~330万円 |
8畳 | 280~320万円 | 400~440万円 |
10畳 | 350~400万円 | 500~550万円 |
水回りを増築する費用
- トイレ(1畳):70~200万円
- 浴室(2畳):75~250万円
- キッチン(システムキッチン):90~400万円
家族構成の変化によってトイレやキッチン、浴室などの水回りを増設するケースも多く見られます。
水回りの増設には配管工事が含まれるため、同じ床面積でも部屋の増設よりも費用が高くなるのが一般的です。また設置するトイレやユニットバス、システムキッチンのグレードによっても価格が大きく変わります。
離れを増築する費用
- 木造:30~50万円/1畳
- プレハブ:25~35万円/1畳
離れとは、母屋(主となる建物)の中ではなく、離れた場所に建てられた建築物のことです。最近では、テレワークの普及に伴い、ワークスペースとして利用できる離れを増築するリフォームも注目されています。
離れの場合、木造かプレハブかによって費用相場が異なります。
木造の離れは、比較的形状の自由度が高く、建てたあとに改築することも可能です。年月とともに離れの用途が変わった場合でも対応しやすいでしょう。
プレハブの離れは、木造よりも費用を抑えられますが、一度立ててしまうと基本的には改築できません。長期にわたって使用用途が変わらない場合などに適しているでしょう。
平屋を2階建てに増築する費用
- 50~100万円/1畳
平屋を2階建てに増築する工事では、部屋の増築だけではなく以下のような工事も発生します。
- 既存の屋根の解体工事
- 耐震性確保のための1階部分の補強工事
- 階段の設置工事
- 新しい屋根の設置工事 など
そのため1階部分に部屋を増築する工事よりも、手間が多くかかるため、1畳当たりの費用相場は高くなります。また2階に新しく水回りを設置する場合は、さらに費用が高くなるため、見積もりの際に細かく確認しておきましょう。
ベランダやバルコニーを増築する費用
- 25~50万円
新たにベランダやバルコニーを設置する方法には「屋根置き式」「柱建て式」「持ち出し式」の3種類があります。
「屋根置き式」とは、1階の屋根部分に支柱を建てて新たなベランダを設置する方法です。比較的コストを抑えやすく、軽量でシンプルなベランダの増築が可能です。
「柱建て式」とは、地面から支柱を建てて新たなベランダを増築する方法です。屋根置き式に比べて耐荷重性が高いため、広さのあるベランダやバルコニーの設置も検討できます。ただし、屋根置き式よりもコストは高くなるのが一般的です。
「持ち出し式」とは、ベランダを建物の構造体と一体化させる増築方法です。外壁との一体感が生まれるため、見た目のデザイン性や耐荷重性も高くなります。
ただし持ち出し式のベランダやバルコニーを設置する場合は、構造躯体や外壁の工事を伴うため、費用相場は高くなります。
サンルームを増築する費用
- 1階にサンルームを設置:50~200万円
- ベランダをサンルームに変更:40~80万円
サンルームは、天気に左右されずに洗濯物を干せるスペースとして活用できるほか、子どもやペットが安心して遊べるプレイスペースにもなります。桜島の火山灰や花粉の飛来から洗濯物を守るスペースとしても利用可能です。
サンルームを設置する費用相場は、設置する場所によって異なります。
1階の掃き出し窓から庭に続くスペースや、ウッドデッキの上などにガラス張りのサンルームを設置する場合は、設置するサンルームのグレードによって費用は前後します。
またベランダをサンルームに変更する方法もあります。ベランダをサンルームに変更する際は「テラス囲い」という製品を使用するのが一般的です。
「テラス囲い」とはポリカーボネート製の屋根と側面がある製品で、ベランダに設置することでサンルームのように活用できます。テラス囲いにもさまざまなグレードの製品が用意されているので、予算に合わせて適切なものを選びましょう。
ガレージ・カーポートを増築する費用
- 1台分ガレージ:100~300万円
- 1台分カーポート:20~60万円
ガレージとカーポートは、どちらも車庫として活用できる空間ですが、それぞれの違いは「三方向を壁で囲まれているか」にあります。
一般的には、屋根にプラスして三方向を壁で囲まれている車庫をガレージ、4本の支柱で屋根を支え三方向には壁がない車庫をカーポートと呼びます。
ガレージは壁で囲われているため、風雨から車を保護する機能は高くなります。またガレージ内に収納を設けて、アウトドア用品などを補完するスペースとしても活用できます。ただしガレージの増築では、基礎工事も発生するため費用は高くなります。
費用を抑えて車庫を設置したい場合は、カーポートがおすすめですが、カーポートはガレージに比べて耐久性や防犯性、風雨からの保護機能が低い点に注意しましょう。
増築でおしゃれな住まいをつくるポイントは?
増築でおしゃれな住まいを実現するためには、既存の家と増築部分の「調和」が大切です。
使用する壁材や床材などの統一感を重視するだけではなく、サンルームやガレージ、カーポートを増設する際は、デザインテイストを合わせることでおしゃれな仕上がりを実現できます。また、屋根や外壁は塗装によって既存部分と統一感を出すことも可能です。
そのためには、増築の計画を立てる段階から完成後の全体像を具体的にして、リフォーム会社とイメージを共有しておくことが大切です。
増築のメリット
増築のメリットは、主に以下の2点です。
- 建て替えよりもコストを抑えられる
- 住みながらの工事が可能
それぞれ詳しく見ていきましょう。
建て替えよりもコストを抑えられる
建て替えの場合、既存の家を解体して新たに建物を建てるため、家全体の解体費用・建築費用が発生します。
しかし増築では、既存の家を残したまま床面積を増やす工事を行います。そのため解体は増築に伴う一部分に留まり、建築費用も増築部分のみで抑えられます。
住みながらの工事が可能
増築では、既存の家を残したまま工事を行うので、工事期間中も家に住むことが可能です。
建て替えとなると、既存の家を解体するため、工事期間中は仮住まいを用意しなければいけません。また改築でも間取り変更など大がかりな工事になると、一時的に仮住まいに引っ越すケースもあります。
その場合は仮住まいの家賃や引っ越し費用、家財の保管費用(レンタル倉庫など)が発生するため、生活が不便になるだけではなく出費も増えるでしょう。
増築はコストを抑えられることに加えて、工事期間中も生活スタイルを大きく変えずに暮らせることがメリットといえます。
増築のデメリット
コスト面や生活面で大きなメリットがある増築ですが、以下のようなデメリットがあることに注意が必要です。
- 既存の建物の耐震工事が必要な場合がある
- 耐久性や見た目に差が生じる場合がある
デメリットの内容を理解して事前に対策を行うことが、増築を成功させるポイントです。詳しく見ていきましょう。
既存の建物の耐震工事が必要な場合がある
既存の家の築年数が経過している場合、新たに増築する部分と既存部分の耐震性に大きな違いが出てしまうケースもあります。
築年数が経過したことで現行の基準に沿わなくなってしまった「既存不適格建築物」の場合でも、必ず耐震工事が必要というわけではありません。しかし既存部分と増築した部分の耐震性のバランスが悪いと、地震の際に建物が倒壊してしまうリスクが高まります。
そのため、増築を行う際は必ず既存の家の耐震調査を行い、状況に応じて必要な耐震工事を行うことが大切です。
また、既存部分と増築部分をつなぐ接合部は、耐震性や耐久性が低くなる傾向にあります。接合部からの雨漏りやひび割れのリスクもあるため、増築を依頼する際は、耐震性への配慮ができる実績豊富なリフォーム会社に依頼しましょう。
見た目の差が生じる場合がある
増築の場合、新たに付け加える部分と既存部分の建築部材が異なるケースも少なくありません。その場合、見た目に差が生じてしまい、家全体の統一感がなくなってしまうこともあるでしょう。
見た目への影響を少なくするためには、なるべく既存の家と統一感のある部材を用意することが大切です。
既存の家の見た目が経年劣化しているのであれば、例えばもともと白い外壁だったとしても、増設部分はベージュやオフホワイトの外壁にするなどの工夫を施し、見た目に大きな差がでないように注意しましょう。
増築では「建築確認申請」が必要?
建築確認申請とは、新しい建物を建てる際に行う手続きで、新たな建物が法律に則っているかを確認します。増築も「新しい建物を建てる」と考えられますが、すべてのケースで建築確認が必要なわけではありません。
建築確認申請が必要な増築
下記2点の「いずれか」に当てはまる場合は、増築確認申請が必要になります。
- 床面積の増加が10㎡以上
- 準防火地域・防火地域での増築
建築確認申請が不要な増築
下記2点の「両方」に当てはまる場合は、増築確認申請は不要です。ただし例外があるため、必ず各自治体に問合せを行い確認しましょう。
- 床面積の増加が10㎡以内
- 準防火地域・防火地域以外での増築
建築確認申請が必要になった場合の注意点
増築に伴い建築確認申請が必要になった場合は、申請費用が発生します。建築確認申請の費用は各自治体で定められており、床面積によって異なります。
鹿児島市では、30㎡以内であれば確認申請に7000円、中間検査に13,000円、完了検査に13,000~14,000円の費用が発生します。(参考:鹿児島市 建築確認申請等手数料一覧)
ただし建築確認申請は施工業者が代行することも多く、その場合は申請・検査費用に加えて手数料もかかります。
また建築確認申請にかかる期間は、1~3週間程度ですが、万が一増築内容に問題がある場合はさらに審査期間は長くなります。工事期間と合わせて、事前にスケジュールを確認しておきましょう。
増築すると「固定資産税」は上がる?
増築を行うと、基本的には固定資産税は上がります。増築工事の完了後、所定の時期に自治体の職員の訪問による家屋調査が行われ、増築分に対しても固定資産税が課されます。
固定資産税の計算方法は、以下のとおりです。
- 課税標準額 × 標準税率1.4%
固定資産税の金額は、固定資産課税台帳に登録された「課税標準額」に、標準税率「1.4%」をかけて算出されます。ひと部屋程度の増築であれば、固定資産税の増税額は数万円程度になるでしょう。
増改築で失敗しないために信頼できるリフォーム会社に相談しよう
増築とは、自宅の敷地面積内で床面積を増やすリフォーム工事のことです。
1階部分にひと部屋増やしたり、お風呂やトイレといった水回りを新たに新設する工事などが代表的な増築リフォームです。そのほかにも、平屋を2階建てに変更する、ベランダやバルコニー、サンルーム、ガレージを新設するといった工事も増築に含まれます。
増築の費用相場は、工事内容によって大きく変わります。まずは増築の実績豊富なリフォーム会社に見積もりを依頼して、工事の内容を明確にすることから始めましょう。